建設業許可 相続・遺言の専門家 埼玉県さいたま市上尾市桶川市伊奈町久喜市 武藤倫雄行政書士事務所

遺言書がBESTとは限らない?(2)

遺言書がBESTとは限らない?(2)

遺言書ではなく、死因贈与契約をお勧めした事例を紹介しています。
ぜひ、前回のブログをチェックしてから読んでみてくださいね。

前回、事前調査の結果を紹介しました。
さぁ検討に入ります。

まずは、以前に甥姪と結んだ死因贈与契約の取消しについてですが、民法及び判例から受贈者が既に何らかの負担を負っていた場合等を除き、いつでも取り消すことができます。
取り消す方法は遺言書のように新たな遺言書による必要はないと解釈できますので(諸解釈がありますが、、)、意思表示のみで足りると考えます。
もちろん遺言書等で取消し、ないしは前契約に抵触する内容を遺しておけば安心でしょう。

今回は既に取消しの意思表示をいていますが、依頼者は遺言書を書くことを希望していますので、その点に検討はいりませんね。

では実際問題として依頼者が亡くなられた後を考えてみましょう。
当然、今回の新たな遺言書で受贈者となっている者は、遺言書によって財産を取得できます。

しかし考えてみてください。
甥姪は以前の死因贈与契約書を持っていますよね。
贈与者が亡くなったことを知ったら、その契約書で所有権移転登記をするでしょう。
万が一、先に登記された場合には新たな遺言書をもって登記の無効を訴え、正しい受贈者で登記し直さなければなりません。
場合によっては訴訟に発展しかねませんね。
時間も手間もかかりますし、心的疲労も生ずるでしょう。

そこで遺言書ではなく死因贈与契約を検討しました。
もちろん契約ですから、双方の同意があることが前提となります。
遺言書との違いはいろいろありますが、私が注目したのは始期付き所有権移転の仮登記ができることです。
仮登記をしてあれば、登記簿にも記載されますので、所在の知れない甥姪も登記する際には気づくでしょう。
なにより、もし先に所有権移転登記をされても仮登記を本登記すれば順位1として自動的にこちらが所有者となるので、煩わしさがありません。
登録免許税も遺言による遺贈の1000/20(相続人は1000/4)に対して、仮登記時1000/10と本登記時1000/10なので問題ないです。(司法書士費用は2回分かかりますが、)

両人に説明したところ、死因贈与契約によることを選択されました。

実際に行った業務手順は、
まずは、甥姪と交わした死因贈与契約書において執行者に指名されていた弁護士の方に、取り消す旨を伝えました。
並行して、財産資料等を取り揃えつつ公証人と事前打ち合わせを行いました。
三重県の公証人です。

公正証書での作成を決めた理由は、甥姪や他の親族による不測の事態を考え、日付けを含め公な文書としておくとともに、高齢である贈与者の意思表示能力を証明しておく為です。
仮に遺言書であっても公正証書にしました。

先の弁護士から書面で了解をいただきました。
公証人の予約をとり、受贈者とともに三重県に向かいます。
遺言書とは異なり、証人は必要ないですから必ずしも同行する必要はないのですが、両人の希望により同行しました。

贈与契約でも執行者は指定できます。
今回は私が就任しました。

遺言書でも、よく執行者は指定しておくべきだといわれますし、私もそう説明します。
理由としては、名義変更時に相続人全員の印鑑がいらないので手続きがスムーズでることがいわれますね。
金融機関での取り扱いは違うものもありますが。

間違いはないですが、実情はもっと切実です。
今回の親族関係を思い出してください。
贈与者に子供はなく、両親は既に亡くなっています。血縁上の兄妹も亡くなっていて甥姪が6人です。
さらに養子にいっていた先に兄妹が4人、現状では生死不明です。
もし亡くなっていたら甥姪が増えるかもしれません。
現在わかっているまでで、推定相続人は10人です。
それも生死すら知らないほどの疎遠になっています。

その推定相続人を全員特定するには、どれほどの人の戸籍を調査しなければならないでしょうか。
両親・養親・兄妹7人・甥姪、、、。
さらに抄本発行の問題。
(推定相続人が死亡している事を証明しなければ、謄本を発行してもらえない場合があります。古い戸籍から追った場合には死亡時まで一通り取ってから、再度子供を確定するために謄本を取り直す事になります。)

特定できたとして、手紙を送ってすぐ連絡がとれれば幸いですが返信をくれない方や受け取り拒否をする方も多々います。
また、連絡がとれても内容に不満で印を押してくれない。何らかの要求をしてくることもザラにあります。

当然、遺言書や契約書が有効であれば最終的には何とかするのですが、
その時間・手間・労力・費用をかけずに済むように、執行者を指定してもらうのです。

公正証書での契約書作成が無事終わり、すぐに仮登記申請をしました。
登記終了後、だめもとで前契約書の甥姪に通知を試みました。出来なければしょうがありませんが、出来れば将来の煩わしさを少しでも解消できるかもしれません。
また、連絡先が分かれば貸金の問題の解決にも使えますから。

甥姪の母親に尋ねると、現在でも住んでいるかはわからないが以前聞かされていたという住所を知ることができました。
特定記録付きの内容証明郵便で、前契約を取り消す旨と契約書を破棄するようにとの手紙を贈与者の意思で出しました。
数日が経ち、配達記録から先方が受け取ったことが確認できたので幸いでしたね。

貸金については、贈与者の方も急いではいなかったのでアクションは起こしませんでした。
一度に甥姪を追いこんで、もしも攻撃的な行動に出られてはいけないので。

今現在、連絡は来ていないそうです。

なんだか、脱線しまくりましたが、以前私が遺言書より死因贈与契約をお勧めした事例を紹介しました。

参考になりましたか?

ではまた。

コメント


認証コード6664

コメントは管理者の承認後に表示されます。

powered by HAIK 7.3.9
based on PukiWiki 1.4.7 License is GPL. HAIK

最新の更新 RSS  Valid XHTML 1.0 Transitional